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大下諒 先生
麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
小動物外科学研究室出身

犬の僧帽弁閉鎖不全症




どんな病気?

・犬の心疾患の多くがこの病気です。
・特に小型犬は年齢とともに罹患率が増加し、13歳までに85%の小型犬に弁の病変が認められると言われています。
・この病気は、僧帽弁(左心房と左心室の間にある弁)の先端がこぶ状に肥厚(粘液腫様変性)し、弁がピッタリ閉じなくなるため「僧帽弁閉鎖不全症」と呼ばれます。


正常な僧帽弁

僧帽弁閉鎖不全症の肥厚した弁



・この弁の肥厚(変性)は慢性的に進行します。

どうなるの?

・通常は肺から戻った血液は、まず左心房に入り、次に左心室へ移動し、そのあと僧帽弁が閉じて左心房に血液が戻らないようにしてから左心室が収縮し、血液を全身に送り出します。
・しかし僧帽弁がピッタリ閉じてないと、左心室の収縮に伴い血液の一部が弁の隙間から左心房に勢いよく逆戻りします。
・その僧帽弁から勢いよく逆戻りする血流(僧帽弁逆流)が心雑音として聞こえます。




それから?

・左心房は、肺から戻ってきた血液に僧帽弁から逆流して入ってきた血液が加わるため容積が大きくなります(左心房拡大)。
・左心室から左心房に逆流した血液は、また左心室に移動し、その後また左心房に戻るため、左心房と左心室を行ったり来たりします。
・左心室は、一部が逆流しても全身に十分な血液を送ることができるように容積を大きくして対応しようとします。(左心室拡大)
・病態が進行すると左心房圧の上昇に伴い肺水腫や肺高血圧症などを発症する場合があります。


         病態が進行して重度に拡大した左心房、左心室 および著しい僧帽弁逆流



 当院の循環器科では、僧帽弁閉鎖不全症などの循環器診療に対し、十分な稟告の聞き取り、視診・触診・聴診などの身体検査、さらに血圧測定、胸部レントゲン検査、心電図検査、心エコー図検査、心臓バイオマーカーを含む血液検査などの中から飼い主様と相談の上、必要と思われる検査を実施し十分な病態把握に基づいた内科的治療を実施しております。
 さらに後日、報告書を作成し検討を加えたより詳しい説明を実施しております。