ハリネズミの診療
ペットとしてのハリネズミ
近年ハリネズミはペットとしての地位を確立しつつあります。しかしながら、適切な飼育環境やかかりやすい病気といった知識は犬や猫に比べて一般的に知られていないことが多いように思われます。病気の早期発見や予防の為にも、飼養する際の知識を身につけておくことが必要です。
ハリネズミの臨床症状
どのような症状が見られた時に動物病院を受診すればよいのかはすべてのオーナー様が悩むところだと思います。以下のような症状が見られた場合は早めに動物病院を受診されることをお勧めいたします。
・四肢の脱力
・フケ、皮膚の脱落、針が良く抜ける
・食欲の低下
・咳、喘鳴
・下痢、血便
・体重減少
・ふらつき
・排尿時に鳴く、排尿困難
・濁った鼻水
上記の他にも気になった症状が見られた場合は早めの受診を心がけましょう。
ハリネズミでよく見られる疾患
子宮腫瘍
ハリネズミでは子宮腫瘍が多く見られます。腫瘍の種類としては腺肉腫、子宮内膜間質肉腫、子宮内膜間質ポリープ、子宮内膜癌が報告されています。
これら子宮疾患の主な臨床症状としては以下のようなものがあげられます。
・血尿、膣からの出血
・体重減少
・腹部の腫瘤とそれに伴う痛み
診断にはレントゲン検査(図1)、腹部超音波検査(図2)、病理組織学検査などが必要になります。
治療法の第一選択としては、全体状態にもよりますが外科的な切除子宮卵巣全摘出術(図3)を行います。
ハリネズミは子宮疾患に罹患するリスクが高いため、予防的に避妊手術を行うことが推奨されています。
扁平上皮癌
扁平上皮癌はハリネズミの口腔周囲にできることが多い悪性腫瘍です。皮膚、眼周囲などにもみられることがあります。近くのリンパ節などに転移することが多く、肺への転移も末期には現れます。
臨床症状としては以下のようなものがあげられます。
・体重減少
・口腔の腫瘤、歯の脱落(図4)
・皮膚のただれ
診断には細胞診検査などが必要となり、転移の有無の確認にはレントゲン検査、CT検査などが必要になります。
治療法としては病変部の外科的切除が第一選択となることが多く、その他に放射線治療、抗がん剤治療などが考えられますが、確実な治療法はいまだ確立されていません。
腫瘍が大きくなる前に早期発見することがたいへん重要です。
ハリネズミフラツキ症候群
ハリネズミフラツキ症候群はハリネズミに特有にみられる神経疾患で、後肢のフラツキから症状が始まることが多いです。症状は徐々に進行し、前肢や全身に麻痺が広がっていきます。ご飯を食べる、排泄をするといった行動ができなくなり、多くの場合は発症から1~2年で亡くなってしまいます。
原因や治療法は現在解明されておらず、診断された場合はその後のQOLを少しでも高めるサポートをしていくこととなります。
主な臨床症状として以下のようなことがあげられます。
・後肢のフラツキ、歩行困難
・体重減少
・排便・排尿困難
またこの疾患は生きている間に確定診断することが出来ないため、他の疾患の可能性を除外していく除外診断という方法が必要になります。
ハリネズミの白内障
白内障は、通常高齢のハリネズミに発生し、失明になる最も多い病気です。徐々に失明するため、環境への適応能力が高く、通常の生活に支障は出にくいと考えられます。年齢や状態を配慮して、質の高い生活を提供することが大切です。